不動産鑑定士の実務修習とはどんなものか知りたい、不動産鑑定士試験には合格したけど実務修習をどうしようか迷っている、こうした人向けに不動産鑑定士の実務修習について解説していきます。
不動産鑑定士の実務修習とは
不動産鑑定士試験合格後に不動産鑑定士として登録するには、この実務修習を行い、最後の修了考査に合格する必要があります。
試験に合格してすぐに不動産鑑定士として登録できるというわけではなく、実務修習を実施している鑑定事務所や大学で、実際に実務で必要な知識を習得して、鑑定評価書を作成し、指導鑑定士からの指導を受けることになります。
この実務修習を受けるには、実務修習実施機関(鑑定事務所や大学等)を決め、日本不動産鑑定士協会連合会へ実務修習の申請をすることになります。
そして、この実務修習の期間は通常1年コース、2年コース、3年コースのどれかを選んで進めていくことになります。
行う内容はどのコースでも同じなので1年コースの場合は、2年コースや3年コースで行うことを1年で集中的にやってしまうので、スケジュール的にはかなりタイトになります。
ただ試験合格後は早くみんな不動産鑑定士登録をしたいので、1年コースで行う人は多いです。
実務修習の申し込みで注意しておいた方がいいことは、例年論文式試験の合格発表が10月下旬で実務修習申し込み締切が11月上旬となっています。論文式試験の合格発表後すぐに実務修習の申し込みをしないと、締切に間に合わなく次の年になってしまいます。
私の場合は、実務修習機関や仕事とのスケジュール調整で実務修習の申し込みを次の年にしました。転職とかする予定はなかったので、そのまま今の職場で働きつつ翌年の実務修習申し込みへの準備をしていきました。
もし論文式試験合格発表後、すぐに実務修習に入っていきたい人は、合格発表前から動き始め、実務修習機関やスケジュールの調整等も必要になってきます。
実務修習の内容は、大きくわけて①講義、②基本演習、③実地演習に分けられます。
私が実務修習を行ったのは平成26年からの第9回実務修習の2年コースです。その時の実務修習について以下順に解説していきます。
不動産鑑定士の実務修習の講義
前期講義と後期講義に分かれていて、前期3日間、後期3日間を指定の講義会場で実務修習生が集まり、講義科目毎の担当講師の講義を受講します。
その日の内に確認テストがあります。これは講義を聞いていればほぼクリアできます。もし合格基準に達しない場合は後日追試を受けることになります。
受講会場は東京のみとなっているので、日本全国の合格者が集まります。
働きながら実務修習を行っている人にとっては、まずこの連続して平日3日間の講義期間を前期と後期の2回、仕事を休まないといけなくなります。
そのため、事前にスケジュールの調整等しておく必要があります。
不動産鑑定士の実務修習の基本演習
基本演習は、集合形式でグループに分かれ鑑定評価報告書を作成していきます。1段階2日間で、計2段階4日間行います。
東京都と大阪が受講会場となっています。
第1段階は更地、第2段階は貸家及びその敷地について、実査、グループ検討、全体討論を行い、鑑定評価報告書の作成、提出を行っていきます。
ここでは、グループに分かれて行っていくので、他の試験合格者との意見交換や交流も深めることができ、情報収集することができます。
次の実地演習も鑑定評価報告書を作成していくことになりますが、基本演習はグループで検討、作成、発表していくという点が、基本的に1人で作成していく実地演習と大きく違う点になります。
不動産鑑定士の実務修習の実地演習
実地演習は、物件調査実地演習と一般実地演習により構成されています。
物件調査実地演習は、土地、建物に関する物件調査報告書を作成し、提出します。
一般実地演習は、更地から家賃までの様々な類型の物件の鑑定評価報告書を、実際に作成し、提出します。
これは自分が実施する実務修習期間の指導鑑定士に指導を受けながら鑑定評価報告書を作成していきます。
私が行った第9回実務修習当時は合計で22類型の不動産の鑑定評価報告書を作成しました。
2年コースだと5回の提出期間が決まっていて、それぞれの期間で、複数の類型の鑑定評価報告書を提出していくことになります。
22類型あるので、作成していくのも大変ですが、対象地を探すのも一苦労になります。
この実地演習が一番、実務修習機関や指導鑑定士によって、やり方が様々になってくるところでもあります。
不動産鑑定士実務修習まとめ
不動産鑑定士の実務修習は、まさに1人の不動産鑑定士として鑑定評価報告書を作成して世に出すことができるようになるまでの、最後の段階となります。
これまでの、試験勉強とは違い、クライントからの依頼を受け、成果物として鑑定評価報告書を提出して報酬を得るということを意識して行っていく必要があります。
また同期の実務修習生との交流も深めて、狭い鑑定業界のネットワークを築いていくのもいいかもしれません。
実際は、私は実務修習機関は大学で行いましたが、同期の修習生と学んだ時間は、とても貴重な時間で、互いに刺激になりました。
そして、他の実務修習機関の修習生と行う集合形式での講義、演習は、様々な考え方や意見を交わしながら、理解をふかめていくことができます。
ここまで不動産鑑定士の実務修習について解説してきましたが、以前から国土交通省や不動産鑑定士協会連合会でも、実務修習の見直しについて検討されてきました。
そして、平成29年の第12回実務修習から大幅に改正されています。基本的な、講義、基本演習、実地演習、修了考査の構成は変わっていませんが、それぞれの科目数や講義数等が少なくなっていたり、より行いやすく、かつ効果的に変更されています。
これから実務修習を行う方はよく協会のホームページ等で最新の情報を確認しておいた方がいいです。