差押の効力 概要
差押の効力は、処分禁止、時効更新、従物、果実、保険金等、相続等、仮差押等、担保のための仮登記がある財産、延滞税の一部免除に関する効力について把握する必要があります。
差押の効力 理論暗記
問題(穴埋め) 差押の効力
以下の(A)~(t)までの空欄に入る文言を記載しなさい。
1⃣処分禁止の効力
差押財産につき、国税を徴収するために不利益となる処分は禁止される。
2⃣時効更新の効力(通則法72条③、民法147条②)
差押えにより、国税の徴収権の消滅時効は、更新する。
3⃣従物に対する効力(民法87条②)
主物を差押えたときは、その差押の効力は従物に及ぶ。
4⃣果実に対する効力(徴収法52条)
(1)(A)
差押の効力は、差押えた財産から生ずる(B)。
ただし、滞納者又は第三者が差押財産の使用又は収益をすることができる場合には、その財産から生ずる天然果実については、この限りでない。
(2)(C)
差押の効力は、差押財産から生ずる(D)。
ただし、債権を差し押えた場合における(E)については、(F)。
(A)天然果実に対する効力(B)天然果実に及ぶ(C)法定果実に対する効力(D)法定果実に及ばない(E)差押後の利息(F)この限りでない
5⃣保険金等に対する効力(徴収法53条)
(1)(G)
差押財産が損害保険等の目的となっているときは、その差押えの効力は、(H)。
ただし、損害保険等の目的物を差し押さえた旨を(I)しなければ、その差押えもって(J)。
(2)(K)
徴収職員が差押に係る上記(1)の(L)において、その財産がその保険等に係る事故が生じた時に先取特権、質権又は(M)は、その先取特権者、質権者又は抵当権者は、民法における先取特権の物上代位の権利の行使のためその(N)を、その(O)に(P)。
(G)損害保険金等の請求権に対する効力(H)保険金等の支払を受ける権利に及ぶ(I)保険者等に通知(J)保険者等に対抗することができない(K)抵当権等が設定されていた場合の物上代位の特則(L)保険金等の支払を受けた場合(M)抵当権の目的となっていたとき(N)保険金等の支払を受ける権利(O)支払前(P)差押をしたものとみなす
6⃣相続等があった場合の滞納処分の効力(徴収法139条)
(1)滞納者の財産について(Q)、(R)し、又は滞納者である(S)ときは、その財産につき(T)することが(U)。
(2)滞納者の死亡後その国税につき(V)は、その国税につきその財産を有する(W)。ただし、徴収職員がその(X)は、この限りでない。
(3)信託の(Y)場合において、新たな(Z)に信託財産に属する財産について(a)、(b)は、その財産につき(c)することが(d)。
(4)信託の受託者である法人の信託財産に属する財産について滞納処分を執行した後、その受託者である法人としての権利義務を承継する分割が行われたときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
(Q)滞納処分を執行した後(R)滞納者が死亡(S)法人が合併により消滅した(T)滞納処分を続行(U)できる(V)滞納者の名義の財産に対してした差押え(W)相続人に対してされたものとみなす(X)死亡を知っていたとき(Y)受託者の任務が終了した(Z)受託者が就任するに至るまでの間(a)滞納処分を執行した後(b)新たな受託者が就任したとき(c)滞納処分を続行(d)できる
7⃣仮差押等に対する滞納処分の効力(徴収法140条)
滞納処分は、(e)又は仮処分によりその執行を(f)。
(e)仮差押(f)妨げられない
8⃣担保のための仮登記がある財産に対する差押えの効力(徴収法52条の2)
(g)について、清算金の支払の(h)(清算金がないときは、(i))にその差押えがされたものであるときは、(j)は、その仮登記に基づく(k)をすることが(l)。
ただし、その差押えが清算金の支払の(m)(清算金がないときは、(n))にされたものであるときは、(o)は、その(p)をもって(q)に対抗することが(r)。
(g)担保のための仮登記がある財産(h)債務の弁済前(i)清算期間の経過前(j)担保仮登記権利者(k)本登記の請求(l)できない(m)債務の弁済後(n)清算期間の経過後(o)担保仮登記権利者(p)差押え(q)差押債権者(r)できる
9⃣延滞税の一部免除の効力(通則法63条⑤)
税務署長等は、滞納に係る国税の全額を徴収するために必要な財産につき差押えをした場合には、その差押えに係る(s)を(t)することができる。
(s)延滞税の一部(t)免除
差押の効力 Q&A
以下の質問は、財産の差押えについての質問とその回答の事例になります。
<ヤフー知恵袋から抜粋>
Q1 wqx********さん
2019/9/2 15:39
国税徴収法
特許権の差押効力発生時期について質問です。
1,著作権グループ
第三債務者等がない無体財産権等の差押の効力は、差押書が滞納者に送達された時に生ずる。ただし、差押の登記が送達前にされた場合には 、上記にかかわらずその差押の登記がされた時に生ずる。
2,特許権グループ
特許権その他の権利でその処分の制限につき登記をしなければ効力が生じないものの差押の効力は1,に関わらず差押の登記がされた時に生ずる。
とありますが、
特許権は登記により発生する権利なので、必ず登記がされているものだと思うのですが、なぜ、2の様な条文が存在するのでしょうか?
登記をしなくても効力が発生する権利があるのなら例えばどんなものですか?
ちなみに著作権も第三者対抗要件として必ず登記するんですよね?なら著作権も特許権も同じ条文でよいのでは?
A1 ベストアンサー 陶遼太郎さん
2015/2/23 13:45
まず、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、回路配置利用権について、登記ということありません。「登録」です。
特許法では、特許権は、設定の登録により発生します。
その他、登録しなければ効力を生じないとされているものがいくつかあります。
典型的なものは、
(登録の効果)
第九十八条 次に掲げる事項は、登録しなければ、その効力を生じない。
一 【特許権の】移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、信託による変更、放棄による消滅又は【処分の制限 】
二 【専用実施権の】設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は【処分の制限 】
三 【特許権又は専用実施権を目的とする質権の】設定、移転(相続その他の一般承継によるものを除く。)、変更、消滅(混同又は担保する債権の消滅によるものを除く。)又は【処分の制限】
このようなものは、特許法に特別な定めがあるため、質問のうち1と違い、必ず効力発生には登録が必要であり、「差押書が滞納者に送達された時に生ずる」ということにはならないと言うことです。
たとえば、通常実施権の設定は、登録を効力発生要件とせず、従って、「処分の制限」についても登録を効力発生要件とはしておりません。
このようなものは、質問の2、に入らないことになります。
これに対し、著作権には、登録しなければ効力を生じないとするようなものはありません。著作権自体が登録を発生要件とはしておりません。わずかに、
(著作権の登録)
第七十七条 次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
一 著作権の移転(相続その他の一般承継によるものを除く。次号において同じ。)若しくは信託による変更又は【処分の制限】
二 著作権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は著作権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は【処分の制限 】
よって、著作権法の制限をうけることなく、質問の1、に入ると言うことです。
特許権と同じ効力発生要件があるものは、実用新案権、意匠権、商標権です。
差押の効力 事例(SNSコメント)
ツイッターでも差押の効力について様々なコメントがなされています。
抵当権者による競売申立て後でも「抵当権実行としての競売による差押えの効力が発生する前」であれば抵当権消滅請求をすることができる(382)。(差押効力発生時:競売開始決定の債務者への送達or差押登記いずれか早い方。) cf.一般債権者による競売申立て:差押効力発生後でも可。
— 民法bot@司法書士試験 (@Civil_lawbot) April 1, 2021
債権執行は、執行裁判所の差押命令により開始する(143条)
— アセガ (@asega2468) November 10, 2020
差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生じる(145条5項)
なお、債務者にも送達されるが、その時ではない。
メモ
— ゆぴー@司法書士受験生 (@pMOeO6KlLdITOsy) April 19, 2019
根抵当権者自身による差押は、第三者による差押の場合と異なり
取下を原因として差押の効力が消滅しても元本確定効果は覆滅しない。
∵根抵当権者自身の申立または取消により元本の確定効果が変動するとすれば後順位担保権者がそれに振り回され不都合であるから。
差押の効力 国税徴収法・国税通則法
国税徴収法 差押の効力
(果実に対する差押の効力)
第五十二条 差押の効力は、差し押えた財産(以下「差押財産」という。)から生ずる天然果実に及ぶ。ただし、滞納者又は第三者が差押財産の使用又は収益をすることができる場合には、その財産から生ずる天然果実(その財産の換価による権利の移転の時までに収取されない天然果実を除く。)については、この限りでない。
2 差押の効力は、差押財産から生ずる法定果実に及ばない。ただし、債権を差し押えた場合における差押後の利息については、この限りでない。
(担保のための仮登記がある財産に対する差押えの効力)
第五十二条の二 仮登記担保契約に関する法律第十五条(強制競売等の場合の担保仮登記)(同法第二十条(土地等の所有権以外の権利を目的とする契約への準用)において準用する場合を含む。)の規定は、担保のための仮登記がある財産が差し押さえられた場合について準用する。この場合において、同法第十五条中「その決定」とあるのは「その差押え」と、「申立てに基づく」とあるのは「ものである」と読み替えるものとする。
(保険に付されている財産に対する差押えの効力)
第五十三条 差押財産が損害保険に付され、又は中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の七の二第一項(火災共済事業)の規定による共済その他法律の規定による共済でこれに類するものの目的となつているときは、その差押えの効力は、保険金又は共済金の支払を受ける権利に及ぶ。ただし、財産を差し押さえた旨を保険者又は共済事業者に通知しなければ、その差押えをもつてこれらの者に対抗することができない。
2 徴収職員が差押に係る前項の保険金又は共済金の支払を受けた場合において、その財産がその保険又は共済に係る事故が生じた時に先取特権、質権又は抵当権の目的となつていたときは、その先取特権者、質権者又は抵当権者は、民法第三百四条第一項ただし書(先取特権の物上代位)その他これらの権利の行使のためその保険金又は共済金の支払を受ける権利をその支払前に差し押えることを必要とする規定の適用については、その支払前にその差押をしたものとみなす。
第一款 滞納処分の効力
(相続等があつた場合の滞納処分の効力)
第百三十九条 滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡し、又は滞納者である法人が合併により消滅したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
2 滞納者の死亡後その国税につき滞納者の名義の財産に対してした差押えは、当該国税につきその財産を有する相続人に対してされたものとみなす。ただし、徴収職員がその死亡を知つていたときは、この限りでない。
3 信託の受託者の任務が終了した場合において、新たな受託者が就任するに至るまでの間に信託財産に属する財産について滞納処分を執行した後、新たな受託者が就任したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
4 信託の受託者である法人の信託財産に属する財産について滞納処分を執行した後、当該受託者である法人としての権利義務を承継する分割が行われたときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
(仮差押等がされた財産に対する滞納処分の効力)
第百四十条 滞納処分は、仮差押又は仮処分によりその執行を妨げられない。
国税通則法 差押の効力
(納税の猶予等の場合の延滞税の免除)
第六十三条 第四十六条第一項若しくは第二項第一号、第二号若しくは第五号(同項第一号又は第二号に該当する事実に類する事実に係る部分に限る。)(災害等による納税の猶予)の規定による納税の猶予(以下この項において「災害等による納税の猶予」という。)若しくは国税徴収法第百五十三条第一項(滞納処分の停止)の規定による滞納処分の執行の停止をした場合又は第四十六条第二項第三号、第四号若しくは第五号(同項第三号又は第四号に該当する事実に類する事実に係る部分に限る。)若しくは第三項の規定による納税の猶予(以下この項において「事業の廃止等による納税の猶予」という。)若しくは同法第百五十一条第一項若しくは第百五十一条の二第一項(換価の猶予の要件等)の規定による換価の猶予をした場合には、その猶予又は停止をした国税に係る延滞税のうち、それぞれ、その災害等による納税の猶予若しくは当該執行の停止をした期間に対応する部分の金額に相当する金額又はその事業の廃止等による納税の猶予若しくは当該換価の猶予をした期間(当該国税の納期限の翌日から二月を経過する日後の期間に限る。)に対応する部分の金額の二分の一に相当する金額は、免除する。ただし、第四十九条第一項(納税の猶予の取消し)(同法第百五十二条第三項又は第四項(換価の猶予に係る分割納付、通知等)において準用する場合を含む。)又は同法第百五十四条第一項(滞納処分の停止の取消し)の規定による取消しの基因となるべき事実が生じた場合には、その生じた日以後の期間に対応する部分の金額については、国税局長、税務署長又は税関長は、その免除をしないことができる。
5 国税局長、税務署長又は税関長は、滞納に係る国税の全額を徴収するために必要な財産につき差押え(租税条約等の規定に基づき当該租税条約等の相手国等に共助対象国税の徴収の共助又は徴収のための財産の保全の共助を要請した場合における当該相手国等が当該共助対象国税について当該相手国等の法令に基づいて行う差押えに相当する処分を含む。以下この項において同じ。)をし、又は納付すべき税額に相当する担保の提供(租税条約等の規定に基づき当該租税条約等の相手国等に共助対象国税の徴収の共助又は徴収のための財産の保全の共助を要請した場合における当該相手国等が当該共助対象国税について当該相手国等の法令に基づいて受ける担保の提供を含む。以下この項において同じ。)を受けた場合には、その差押え又は担保の提供に係る国税を計算の基礎とする延滞税につき、その差押え又は担保の提供がされている期間のうち、当該国税の納期限の翌日から二月を経過する日後の期間(前各項の規定により延滞税の免除がされた場合には、当該免除に係る期間に該当する期間を除く。)に対応する部分の金額の二分の一に相当する金額を限度として、免除することができる。